デザインコンペ「LIFE DESIGN信州2009」選考結果

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信州には自然に恵まれた食材や、古くから伝わる食文化があります。“食”に対する安全性や食事の偏りが問われる時代に、「安全な食」や「楽しい食卓」を改めて考えなくてはなりません。信州から理想の“食”を発信し、次世代に伝えていくためには、クリエーターの新しいアイディアが必要です。そこで「信州の食」を広くPRするデザインや、信州の資源を使った食に関する新製品などのデザインを募集しました。


グランプリ「信州の特産物を持ち歩く 『おいしいさんぽ』」

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01-05NAa OYAJI 中沢 定幸+アオキタカエ

食卓だけでなく、いつもいっしょにあることで、信州の特産物を感じていたい、をコンセプトに、信州の特産物をイラストにて表現し、4種類の紙、布に印刷。そこに散歩バッグの型紙のパターンを入れました。ポスターだけでなく、クラフト感覚で親子などで気軽にバッグが作れます。街でバッグを持ち歩いたり、お買い物をしたりすることによりポスターと連動がとれたPR効果をねらいます。夕食の買い物中に、特産物を買いたくなるかも。


準グランプリ「信州カラマツのそばちょこ+(プラス)」

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コバヤシ ユウジ MWC.WORKSHOP

長野県産唐松材から削り出した、異なる3種の器が重なったかたちは、豊かな森からの恵み“木の実”をモチーフにしたものです。
蕎麦ちょこ+○○○… としてだけでなく、アイディア次第でさまざまな使い方、そして楽しみ方ができる、県内資源を活かした新しい木器の提案です。


デザイン提案部門賞「信州の雪景色を食卓へ」

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北村 ひでき

「楽しい信州の食卓」をテーマに信州の雪原をイメージしたプレート。新雪を思わせる白いプレートに動物の足跡やタイヤの跡をエンボス加工し、動物や人々の生活を表現しています。足跡は適度に弧を描くことで、「寄り道をしながら楽しんで行きましょう!」という気持ちを込めました。タイヤの跡ならばドーナツ、ウサギの足跡ならば野菜サラダといった遊び心の有る盛り付けも楽しめます。


デザインPR部門賞

「名山の名産品」
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黒やなぎ 潤(「やなぎ」は木へんに夘)

信州の山々がうみだす様々な影響を受けて育まれる、北信、東信、中信、南信の4地域の名産品を選び、「食」と「産地」の関係を視覚化することを試みました。

「小布施丸茄子」
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中原 謙一 エイブルデザイン

信州に住むことの幸いを伝統野菜・小布施丸茄子の色と形でダイレクトに訴えた。茄子のヘタの裏側に山並と昔の家並を見たとき、理屈は必要ないと思いました。


選考委員特別賞 鈴木進賞

「はちのこべっこうあめ」(デザイン提案部門)
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黒岩 咲子 ヒューマンアカデミー

信州で昔から珍味として食されてきた「蜂の子」を使い、それをべっこうあめに閉じ込めてみました。昔懐かしい色と味、さらには、「・・・虫!?」というどっきり感。食べようか、どうしようか真剣に悩むと思います。保存食としての伝統の味や、山深い信州ならではの虫に対する親しみやすさをPRしています。


選考委員特別賞 新村則人賞

「かじりんご」(デザイン提案部門)
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mina mina

「食」という行為。そこには食べるという楽しみがあり、そして食べ終わった時の満足感は幸福感につながる。りんごはそのまま食べられるという簡便性を備え、そして何より食べた後の残骸が何ともかわいらしい。この「かじりんご」は、まさに食という行為の幸福感の象徴である。あえて完全体ではなく、ゴミとして捨てられてしまう瞬間をモチーフとすることで、食事を始める時、箸を休める時、食事を終える時に、改めて食というものについて考えさせることができる箸置きである。


選考委員特別賞 内田和美賞

「atree」(デザイン提案部門)
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小玉 一徳 京都工芸繊維大学

長野県の森林率は78%と非常に高く、その中には、日本三大美林のひとつに数えられる木曾檜があります。檜は、人間だけでなく森林環境全体のためにも計画的に間伐される必要のある樹木です。今回、この木曾檜の間伐材を利用したプロダクトを提案します。「atree」は、1本の木を分かち合う夫婦箸です。木目の繋がりは夫婦の絆を表現し、互いの存在を感じさせます。楽しい食事は一人では成り立ちません。atreeは、自然と二人が食卓を共にするよう働きかけます。この小さな木が出発点となり、家族という大きな木へと育っていくことを願います。


スローフード賞 「木曾赤蕪」(デザインPR部門)

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轟 理歩

学生特別賞「笹寿し×川(飯山)」(デザインPR部門)

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黒岩 咲子(ヒューマンアカデミー)


入選(デザイン提案部門)

「凛具 Ring」
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磯村 孝幸(磯村製作所)

「ハナサクテーブル」
12
大西 春花(武蔵野美術大学)

「水引器」
13
mina mina


入選(デザインPR部門)

「米魚両善」
14
中島 聡子(トドロキデザイン)

「うますぎて憎い信州ワイン」
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湯田坂 奨+伊藤 政和(クリエイティブファクト寺島デザイン室)

「風土(Food)」
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岸田 久美子(エイブルデザイン)


LIFE DESIGN 信州 2009 選考講評

味噌、リンゴ、ソバのように、信州には全国に名を馳せる食の特産品が多いせいもあるのか、応募数は昨年の約2倍、延べ102(提案部門37、PR部門65)に上りました。内、県外からの応募が約3割と予想以上に多く、また学生の応募も約4割を占めて大きく増えたのが特徴的でした。
総じて思いのこもった力作が多く、信州の食はデザインの対象としても大いに魅力があることがうかがえます。当地の気質として、勤勉だけれど謙虚で伝えることが苦手との指摘がありますが、それではせっかくの資源が活かせません。是非デザインという専門性でその価値を表現し、持続して伝えることが大切です。そしてそれは、本県産業の重要な課題でもあります。
ここに寄せられたデザイン提案から、食に係わる本県産業のポテンシャルの高さと、更なる飛躍の可能性を感じることができます。皆様にも是非それを共有していただき、このコンペが、実際の事業にデザインを導入する契機になれば大変幸いです。

さて、それらの中から今回グランプリに輝いたのは、中沢定幸さん(長野市)の「信州の特産物を持ち歩く おいしいさんぽ」でした。これは、食にまつわる特産物をモチーフにしたイラストが並んだ布地調のポスターで、その丁寧な表現から頑張りが伝わって来る作品です。特に、既存のポスターの形に囚われず、例えばショッピングバッグといった展開も含めて提案している発想の柔軟性とアイデアの新規性で評価を得、他よりも頭一つ抜け出たことが選定の決め手になりました。

デザイン提案部門賞は、コバヤシユウジさん(上水内郡中条村)の「信州カラマツのそばちょこ+(プラス)」と、北村ひできさん(長野市)の「信州の雪景色を食卓へ」です。
コバヤシさんの作品は、収納時はコンパクトな卵型に重ね、使用時にバラしてそばつゆと薬味等を入れて使う器のセットです。実際木を挽き加工した試作品によって、形のバランスの良さや木の質感が判り、商品化に近いレベルまで練り込まれています。今の伝統工芸は守りに偏重する傾向が見受けられますが、前向きに新しいものを生み出そうという姿勢も好評価になりました。グランプリと甲乙付け難いので、今回特別に準グランプリとすることにしました。
北村さんの作品は、白い皿を雪原に見立てて信州らしさを表現し、楽しい食事を演出しようとの提案です。皿に描かれる要素と乗せる食べ物の組み合わせで、様々なメッセージのバリエーションを作り出そうとする、奥行きの深いアイデアが印象的でした。

デザインPR部門賞には、黒やなぎ(※) 潤さん(東京都)の「名山の名産品」、中原謙一さん(長野市)の「小布施丸茄子」を選びました。
黒やなぎさんの作品は、デザインの表現技術としては全体の中でも一際高く、大変まとまりのよさを感じます。ただ、発想自体はこれまでにも見られるものなので、そこにもう一工夫加わって新規性があれば、更に素晴らしかったと思います。(※「やなぎ」は木へんに夘)
中原さんの作品は、伝統野菜としてこの地にしっかりと根付いている感じが、堂々と誇らしく表現されており、山との組み合わせも信州らしさをうまく醸し出しています。

学生賞は、黒岩咲子さん(須坂市)の「笹寿司×川(飯山)」でした。笹寿司と笹船を掛けることで、その背景にある清流も含めて信州らしい食をPRするという、素材を組み合わせる着想が素晴らしい作品です。学生らしい奔放さがあると、更に良いと思いました。

また、今回のテーマ「信州の食」にちなみ、信州スローフード協会が選ぶスローフード賞は、轟理歩さん(長野市)の「木曽赤蕪」でした。開田村や王滝村等木曽の高原地帯で栽培される赤蕪は、乳酸菌で漬けたこの地方独特の「スンキ漬け」として昔から食される、信州を代表するスローフードの原料です。その着眼点や美味しさの表現から、信州への愛着がにじみ出ているようでした。


審査員 講評

新村 則人 氏 (株) 新村則人デザイン事務所 グラフィックデザイナー
グラフィックは慣れていますが、プロダクトは少し戸惑いがありました。実用的な完成度と柔軟なアイデアの対決となったグランプリ選考では、このコンペにもっと発展して欲しいとの願いを込め、より新規性のある方を推しました。デザインには工夫が大切で自分もそう心掛けていますが、提案部門では商品化できそうな工夫が随所にあり、よかったです。PR部門は、食材そのままの表現が多く、もう少し工夫が欲しいと思いました。全体のレベルは十分に高いですし、今後まだまだ伸びる余地があると思います。
審査員特別賞には、mina minaさん(東京都)の「かじりんご」を選びました。信州のりんごをモチーフにした箸置きで、大変素直な表現と、実現性の高さに惹かれました。当地らしい食卓を演出できるのではと思いました。

鈴木 進 氏 長野県地域資源製品開発支援センター 総合プロデュサー
作品から食と地域のつながりの深さを改めて感じ、地域とデザインを関係付けるものとして食というテーマ選定はよかったと思います。信州の食の魅力をどう伝えようとしているかに着目して見ましたが、柔軟で新しい発想や表現も多くあり、参考になりました。入選作品は拮抗していて、突出したものがないことに物足りなさを感じました。この創造性を実際の事業に活かすことが特に大切ですが、そんな可能性が高い提案も増えており、今後に期待が膨らみます。
審査員特別賞には、黒岩咲子さん(須坂市)の「はちのべっこうあめ」を選びました。例えば蜂の子は当地の珍味として知られ、信州らしい食でもありますが、あまり美味しそうなイメージではありません。それを若者の感覚で、美味しそうにデザインしようとしている点に好感を持ちました。

内田 和美 氏 (有) MIE Design プロダクトデザイナー
新たな信州の食をつくり、伝えるために、どうしたらいいのかというデザインの回答がしっかり提案されている作品が多く、毎回徐々に成長していると感じます。食は正に信州の今に密着したテーマで、それを先に進める意味性や方向性が提案できているのは、よいと思いました。提案部門では、実際に触れて、使い勝手までリアルに表現できる現物があると、やはり強いです。学生の提案が量・質共に上がっていて、ハッとするものが幾つかありました。ここから事業化にどうつなげて行くかが重要なので、周りも含め是非そのような道筋を拓いて行けたらと思います。
審査員特別賞には、小玉一徳さん(京都市)の「atree」を選びました。信州の森林と食という異なる資源を結び付けた社会性のある提案に、一目見てピンと来るものがありました。

2009年9月25日

デジタルコンテンツ制作・企画など。