「信州ブランド・デザイン賞2004」選考結果

※初年度は「信州ブランド・デザイン賞」という名称でした。

sbda2004

 



 

本賞は、「デザインを活かした信州発の優れたブランドを選考する」という、全国的にも大変ユニークな試みです。ブランドやそのデザインの優劣をどう判断するのか、特に定まった方法が見当たらない現状では、勢い主観に依ってしまい勝ちです。そこでより客観性を期するよう選考委員一同で相談し、
 「志向性(考え方)」
 「表現性(デザイン性)」
 「地域性(信州らしさ)」
 「将来性(継続・発展性)」
という4つの指標を設けました。

志向性(考え方)」とは、事業者が他にはない自らの“強み”を確立し、それに基づく社会公益につながる商品やサービスを、如何にブランドとして打ち出そうとしているかということです。
「表現性(デザイン性)」とは、上述のブランドづくりの志向を、如何に具体的な姿・形として効果 的にデザインし、発信しているかということです。
「地域性(信州らしさ)」とは、県下の事業者の後ろ盾として在る様々な地域性を、如何にブランドづくりに活かして相乗効果 を生んでいるかということです。
「継続・発展性」とは、ブランドづくりがその場凌ぎでなく、如何に継続的に発展性のある経営戦略として行われているかということです。
これら4つの指標を如何にバランス良く兼ね備えているかを「信州発の優れたブランド」の判断基準として共有した上で、選考を進めました。

ここに最終的にノミネートされたブランドを前にして、各選考委員の主観では「なるほど」というものだけでなく意外と感じるものもあって、やはり必ずしも一致した評価にはなりませんでした。しかし先に挙げた指標に沿ってみると、県下に数多ある候補の中から、一般推薦も含め約半年掛けて選出された各ブランドには、それなりに相応しい理由を見出すことができました。それを一つ一つ検証した上で、何れも本賞の趣旨に適う信州発の優れたブランドであると判断し、これら29ブランドを入賞とすることにいたしました。 最終選考の様子
各賞決定へ大詰めの論議
その中から栄えある「金賞」に輝いたのは信州善光寺門前の名物として全国に知られる「根元 八幡屋磯五郎七味唐からし」です。ブランド価値の核心は顧客との間で培った特別 な信頼関係にあるともいえます。その点老舗中の老舗として江戸時代から長く、味や製法、パッケージ(缶 や袋)などを一貫して守り、ブランド価値を継承している「志向性(考え方)」や「継続・発展性」を、高く評価いたしました。併せて、このところオリジナルグッズやTVCMなどにより、前向きに発信している「表現性(デザイン性)」もプラスのポイントとなりました。

「銀賞」に選ばれた3つのブランドについて、先ず「Colorio」は、ご存知のように諏訪・松本地域を本拠とするセイコーエプソンの、プリンタ・スキャナ・デジカメといった民生向け情報機器の事業ブランドです。電気・電子機器、精密機器といった分野のものづくりは、戦後県下の主柱産業として発展してきましたが、部品にしろ完成品にしろこのように自らブランドを構築して最終消費者に直接対処しようとするやり方は、あまり盛んではありません。このブランド自体既に信州発という地域性を越えており別扱いとの意見もありましたが、県下事業者の意識を変えて行く先例として意義があるとのメッセージを込めて選出されました。

「かんてんぱぱ」は、伊那食品工業の家庭用寒天の事業ブランドですが、「ちょっと手づくり、一家団欒」といった明確な「志向性(考え方)」をもって展開されています。県下の伝統産業である「寒天づくり」を発展的に引き継いでいる「地域性(信州らしさ)」、加えて「かんてんぱぱガーデン」等で地域振興に積極的に貢献しようとしている「継続・発展性」も、ブランドづくりにとって有効であると評価されました。

「真澄」は「信州が生んだ天下の銘酒」のコピーの如く、諏訪地方の気候風土という「地域性(信州らしさ)」を活かし、美酒を追求する酒づくりで県下地酒の代表的な銘柄として知られています。外見を飾ることや奇抜さで人目を引くことは苦手としながら品質本位 を貫く「志向性(考え方)」も、如何にも信州らしさと上手くマッチして相乗効果 を生み出していると支持を集めました。

「特別賞」に選ばれた3つのブランドについて、先ず「小布施堂」は「小布施といえば栗菓子」として名を馳せる老舗ブランドの一角です。同社が中心となって始まった「街並み修景事業」は年間120万人以上の観光客を呼び込む契機となり、街のブランドづくりの成功事例として全国から注目されています。このような地域ぐるみの取り組みにおいて、例えば「産地から王国へ」といったスローガンや、文化的観光施設一体型の喫茶店やレストラン等により、それを牽引している「志向性(考え方)」や「継続・発展性」が特に評価されました。

「TAKEUCHI」は竹内製作所のミニショベル等建設機械の事業ブランドです。売上高の9割を占める海外では、ベルリンの壁崩壊という歴史的場面でも活躍し「建機のベンツ」とも称される等強いブランド力を確立しています。「機能優先・性能第一」を信条とし、「自社製の最終製品をつくる」との「志向性(考え方)」を実現している点は先の「Colorio」同様県下産業機械のブランド化の先例であり、開発設計を坂城町で行なっていることも、「地域性(信州らしさ)」の発揮につながるものと思います。今後国内でも、信州発のブランドとして躍進して欲しいとの期待を込めて選ばれました。

「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」は、信州から発する西洋音楽祭の事業ブランドとして、広く知られるようになりました。世界的な音楽家が集う国際イベントを、日本から、そして山岳都市松本から発信することにこだわる「志向性(考え方)」と「地域性(信州らしさ)」が、地域の芸術・文化的イメージ向上に貢献しているところが特に高く評価されました。

全体的にみると、先ず「志向性(考え方)」については、さすがに選ばれたものだけに各々それなりのものがあります。しかしそれらの“強さ”や“明確さ”においては結構バラツキがあり、総じてもっと強さが欲しいとの印象をもちました。

 

「表現性(デザイン性)」については、未だこの点について事業者の価値認識も十分でなく、またデザイナーやクリエイターの経験不足も否めないところです。ブランドは如何に卓越した「志向性(考え方)」「地域性(信州らしさ)」「継続・発展性」があっても、それ相応の「表現性(デザイン性)」が伴わなくては顧客に適切に伝えることができません。この点からブランドとデザインは一蓮托生ともいわれる訳で、4つの評価指標の中で最も足りないところと思われます。
「地域性(信州らしさ)」については、農業、食品、観光といった分野では前面 に出ていますが、電気・電子、精密、機械ではさほど出ていないといった業種間の違いがみられます。県下にはこの自然、歴史、文化といった各側面 においてこの地ならではの素晴らしい地域性があり、それらはブランドづくりの後ろ盾として力になります。イメージの相乗効果 を発揮するよう、もっと上手く活用することが重要かと思います。
「継続・発展性」については、ブランドづくりを経営戦略としてしっかり位 置付けているものも中にはみられますが、未だ十分なレベルで競っているとはいい難い状況です。これから県下の事業者が前向きな研究と実践を繰り返し、より確かな戦略を構築し高めて行くことが望まれると思います。

本県を含む地方経済が長引く景気停滞からなかなか抜け出せない中で、国の構造改革の一環として地方の自立が求められるようになりました。このような環境変化への処方箋として注目されるブランドづくりは、「これからの地方にとって利益の源泉」ともいわれています。それを踏まえてこの機に「信州ブランド・デザイン賞」が創設されたことには、改めて大いに意義があると思います。
ここに入賞を果たした29のブランドには、以降の信州のブランドづくりにおける目標となり、周りを牽引していただくよう望みたいと思います。そしてこの賞が県下にブランドづくりの気運を波及させる契機となり、これらを超える強いブランドが次々と生まれ、育まれて行くことによって、自立的な産業・社会へと向う先進的な地方となることを期待いたします。

2004年9月30日

〔選考委員〕(敬称略)

  • 信州デザインフォーラム開催実行委員会
    委員長 深沢 賢一郎
  • (社)長野県経営者協会 専務理事 関 安雄
  • 信州大学人文学部 教授 中嶋 聞多
  • (財)長野経済研究所 調査部長 平尾 勇
  • 長野県デザイン振興協会 常任理事 鈴木 進
  • 長野県デザイン振興協会 常任理事 土屋 修三

デジタルコンテンツ制作・企画など。

カテゴリー: